「毒性」とは
  化学物質などによる、生物に悪影響を与える性質をいいます。通常は、毒性は一般毒性と特殊毒性に分けられます。

1.一般毒性は、血液検査、尿検査、病理組織学的検査などのような一般的な方法で観察できる毒性のことで、急性毒性と慢性毒性に分けられます。
 (1)急性毒性:1回の投与(暴露)または短期間の複数回投与によって短期間(終日〜2週間程度)に生じる毒性のことです。急性毒性の強さの尺度は、半数致死用量(LD50), または、半数致死濃度(LC50, 吸入毒性の場合)、すなわち同量投与された個体のうち半数が死に至る用量(濃度)で表します。単位としては普通mg/kg(体重1kg当りの投与mg)あるいは、mg/m3、またはppm(吸入毒性の場合、吸入ガス中濃度)を用います。毒物・劇物などはLD50を目安に指定されています(毒物及び劇物取締法参照)。
 (2)慢性毒性:長期間(通常6ヶ月以上)の連続または反復投与によって生じる毒性のことです。また1〜3か月程度で発現する毒性を亜急性(または亜慢性)毒性といいます。

2.特殊毒性は、吸入や経皮などの特殊な投与方法によって現れる毒性や、変異原性、発がん性、生殖毒性、催奇形性などの特殊な観察法によって評価される毒性のことをいいます。
特殊毒性は、次のような各種の毒性を含みます。
 (1)刺激性:皮膚や粘膜などに投与された物質によって炎症が引き起こされることをいいます。物質自体によって起きる急性的影響を一次刺激性といい、物質によって特異的にアレルギー反応が起こされる場合を感作性といいます。なお強酸・強アルカリなどのように皮膚や粘膜自体が破壊される場合は腐食性といいます。
 (2)免疫毒性:化学物質などの投与(暴露)により免疫系に悪影響を及ぼすことで健康被害が生じることです。病原体や腫瘍細胞に対する抵抗性の低下をまねく免疫系の抑制と、自己免疫疾患の悪化や過敏症(アレルギー)反応が引き起こされうる免疫系の亢進(こうしん)があります。
 (3)発がん性:ある物質を生体に摂取することによって、その影響で体内に悪性腫瘍を発生させる、または発生を促進する毒性のことです。
 (4)遺伝毒性(変異原性):遺伝情報を担う遺伝子(DNA)や染色体に変化を与え、細胞または個体に悪影響をもたらす性質で、変異原性ともいいます。主な変化としては、遺伝子突然変異、DNA傷害(二重鎖切断、アルキル化) や染色体異常(重複、欠失)などがあります。このような異常を引き起こす物質は、発がんに結びつく可能性があり、生殖細胞で起これば次世代の催奇形性・遺伝病の誘発につながる可能性があります。
 (5)催奇形性(発生毒性):妊娠中の母体にある物質を投与した時に、胎児に対して形態的、機能的な悪影響を起こさせる毒性のことです。
 (6)生殖毒性(繁殖毒性):生物の生殖能(生殖器官の形態異常や、受精、性周期、受胎能、分娩の異常などの機能異常)、さらに胚・胎児への障害などの毒性のことです。繁殖毒性ともいいます。

※『食品の安全性に関する用語集(第4版)』食品安全委員会(2008)を参考にしました。