農業の持続可能性と有機農業
 農業の持続可能性を可能にするには「生産基盤(自然資源)としての土壌」と「なりわい(生活)としての農業」という2つの土台の持続 可能性が重要と思われます。安全・安心な作物を安定的に生産するには健康な土壌が必要であり、健康な土壌を維持するには農家が経済的に自立し、 生活を営めることが必要です。生産基盤である土壌を守るための活動(投資)が結果として生業(経営)を強くし、生業が安定するからこそ、未来 の生産基盤へ目を向けることができる。こうした「正」の循環を維持することが持続可能な農業を支えていると考えられます。
 「生産基盤としての土壌の持続可能性」が重要であるという考えは、国際社会の“常識”となっており、 国連のFAOとWHOが合同で設置して いるコーデックス委員会の『有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン』にも次 のように記されています。
有機農業は、環境を支えるさまざまな手法の一つである。有機生産システムは、社会的、生態的及び 経済的に 持続可能な、最適な農業生態系の達成を目指す生産の明確で厳密な基準に基づいている。(中略)有機農業は、外部からの資材 の使用を最小限に抑え、 化学合成肥料や農薬の使用を避けることを基本としている。(中略)有機農業は、生物の多様性、生物的循環及び 土壌の生物活性等、農業生態系の健 全性を促進し強化する全体的な生産管理システムである。地域によってはその地域に応じた制度が必 要であることを考慮しつつ、非農業由来の資材を 使用するよりも栽培管理方法の利用を重視する。これは、同システムの枠組みにおいて特有の機 能を発揮させるために、化学合成資材を使用することなく、可能な限り、耕種的、生物的及び物理的な手法を用いることによって達成される。 

 つまり、“外部からの資材の使用を最小限に抑え、化学合成肥料や農薬の使用を避けることを基本としてい る”が、主たる目的は“社会的、生態的及び経済的に持続可能な、最適な農業生態系の達成を目指し”“生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活 性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システム”を推進することにあると読めます。
 日本において有機農業を定着・拡大するためには、「どうすれば、社会的、生態的及び経済的に持続可能な、最適な農業生態系が達成されるのか」 「農業生態系の健全性を促進し強化するにはどうすれば良いのか」、に答える技術が蓄積されていくことが重要だと思います。
 最近では、こうした“農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システム”言い換えれば「生態学的農業」を目指す取り組みが各地で 行われています。こうした地域に適合した取り組みの交流を活発にすることで、“有機農業”が活性化することが期待できます。